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こちらはNPO法人子ども発達支援協会CDCIの日々の活動をご報告するブログです!
by cdci
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第5回CDCI心と身体のケアセミナー

2011年12月11日

第5回CDCI心と身体のケアセミナー
知的障がい者の「出会いと結婚、そして家族との絆」 


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障がいをお持ちのご家族にとって、子供が成長し、恋愛、結婚までに至る過程には多くの心配や不安があります。そこで今回のシンポジウムでは、知的障がいをお持ちの方々の日常生活や就労問題、家族や友達との人間関係、地域の中で安心して生活を送れるよう支援、指導されている方々、そして結婚歴7年のご夫妻にご参加をいただき下記の通り開催しました。


開催日時
平成23年11月20日(日)
受付開始13:30 閉会16:00
開催場所
調布市文化会館たづくり 
10階 1001学習室
コメンテーター
東京都心身障害者福祉センター 山本 良典氏
調布市社会福祉事業団 障害者地域生活•就労支援センター 「ちょうふだぞう」施設長 松井久美子氏
練馬区光が丘障害者地域生活支援センター「すてっぷ」相澤 紀子氏
淑徳大学大学院博士後期課程 武子 愛氏
知的障がいをお持ちの渡辺芳雄、知子ご夫婦 

 多くの親御さんは知的障がいの子どもがよい人間関係をつくることには賛成であっても、性がからんでくる男女交際や結婚になると、途端に否定的な態度を示すことがあります。
しかし、私たちが好きな人と一緒にいたい、結婚したいと思うのと同じように、障害のある人もいろんな人と関わりたい、好きな人と結婚したいという願いをもっています。

 就労している知的障がいのある人の男女交際や結婚について、保護者のアンケート調査の中のご意見には「努力して結婚し、何とか一家をかまえてほしい」「できれば結婚させたい」という肯定的な意見もありましたが、「親も子も結婚をあきらめている」「心の優しい人に出会えたらと思うが、現状ではほとんど無理である」「適齢期なので心配しているが、能力的に無理である」「結婚を考えるが、身のまわりのこともできず、責任がとれないので結婚しない方がよい」という否定的な意見も多いのが現実です。
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知的障害のある人の結婚の条件として
(1) 経済的に自立していること
(2) 金銭管理ができること
(3) 家事ができること
(4)育児ができること
(5) 性生活をうまくやっていけること
など本人の問題が強調されてきましたが、この条件を当てはめたら、結婚できる知的障がいのある人はいなくなります。これは結婚させるための条件ではなくて、結婚させないための条件になってしまうからです。障がいのある人の結婚生活は本人の能力の問題であるとともに、支援のあり方にかかわる問題でもあるのです。

 地域で安全に豊かに暮らすためには、コミュニケーションがうまくとれることが求められます。対人関係が豊かになり、人間関係が深まったところで、男女交際が始まったり、結婚を意識したりするのですが、知的障がいのある人は、対人関係をうまくとることに困難を持つ人ですから、肯定的な支援が必要なのです。
各地域にはこうした意味で生活支援センターがあります。

 障がい者の地域生活を多面的に支援する地域センター「ちょうふだぞう」では、就労支援事業はもとより、障がい者の生活スキルアップ、余暇の活動支援、大人としてのマナーやアフターファイブ(ウォーキング、ダンス、ダイエット、音楽活動)の講習会を開催。また体験型、滞在型のケアホーム、グループホーム(6カ所)を運営。
施設長の松井さんは『相談は人間関係とお金の事が多いですね。どういう生活をしているかのイメージが大事。それぞれの生活スタイルを大事に、基本は本人の希望や意思です』と静かに話されていました。

 また練馬区の生活支援センター「すてっぷ」は相談、交流、学びの場所で、利用者の多くは知的障がいのある本人、家族。自由に利用できる交流室もあります。
「健康管理」「マナー」「身だしなみ」「対人関係」「防犯」「お金の使い方」「携帯電話の使い方」等の講座、生活余暇支援講座ではヨガ、音楽、料理、お化粧、レクリエーション、パソコンなど、地域で安心して生活していけるように必要なことを学ぶ講座のテーマを月1回決めて、年間通して開催しています。
「基本的には話をしっかり聴くところから始め、希望を叶えるにはどうしたらよいか、一緒に考えていきます。相手を大切にする事、そして自分も大切にする事を伝えるようにしています」と相澤さん(社会福祉士)は話してくださいました。

 
知的障がいのある人の結婚は何らかの支援が必要であり、支援つき結婚を考えていくことが必要です。地域で結婚生活を継続するためには、経済的保障などの制度面だけでなく、夫婦寮、グループ・ホームなどの環境整備、ホームヘルパーの派遣や育児支援などの生活支援が欠かせません。
「ちょふだぞう」や「すてっぷ」のように各地域には生活支援センターがあるので、気楽に相談に出向き、日頃から様々な講習会や講座に参加するのはとても良い事です。

 結婚して7年になる渡辺夫妻は結婚までの経緯をユーモアたっぷりに明るく話してくださいました。年齢を誤摩化されていた事、反対する両親を説得した時の事、お金をかけないデート法、節約法…。そして、結婚して良かったことは?の問いに「家に帰ると部屋に明かりがついていて、一人じゃないんだと安心する」。結婚したいと思っている人や、参加者へ伝えたい事は?の問いにご主人は「一歩ひいて考える事」、知子さんは「お互いに助け合い、隠し事をしない事」、と話し、お互いに見合って笑うご夫妻でした。
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 障がいのない人たちが結婚して、経済的には自立していても、相手を思いやることができず、虐待や暴力で崩壊した家庭はたくさんあります。知的障がいのある人の結婚の条件は、相手の気持ちを生涯大切にできること、自分を大切にして一生懸命生きていること、ではないだろうか…、
性という事は心を生かすと書きます。障がいのある人の性を否定する事は存在を否定、排除する事につながる…と改めて考えさせられた第5回のシンポジウムでした。

今回の開催にあたっての特に助言、ご尽力をいただき、また、自らご参加いただきました東京都心身障害者福祉センター 山本 良典氏と松井久美子氏、相澤紀子氏、武子 愛氏、そして渡辺芳雄、知子ご夫妻に感謝申し上げます。
また、参加者の皆様へのお土産をご提供いただきました(株)キユーピー様に、心より感謝申し上げます。

by cdci | 2011-12-11 10:57 | 心と身体のケアセミナー
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